所在地:富田林町
杉山家は寺内町の創立にも関わったとされ、町の経営に携わり、造り酒屋をするなど寺内町の旧家として繁栄しました。
その杉山家の屋敷である旧杉山家住宅は、富田林寺内町の中でも最古級の町屋建築で昭和58年に国の重要文化財に指定されました。
旧杉山家住宅外観
現在では酒蔵などは残されていませんが、かつて杉山家住宅の広大な敷地には、主屋、酒蔵、土蔵など十数棟が軒を接して建てられていました。
屋敷内部の造りも贅を凝らしたもので、能舞台を模したともいわれる大床の間には狩野派の絵師による老松の絵が描かれ、その奥には茶室も設けられています。
一方で、ダイドコ(台所)の北には後世に2階に上がる螺旋階段が設けられ、伝統とモダンが同居した造りとなっています。
昭和58年には市が購入し、3年を要した解体修理のあと一般公開しています。
左:大床の間と障壁画、右:螺旋階段
明治の末に活躍した明星派の歌人、石上露子(いそのかみつゆこ、本名は杉山タカ)はこの杉山家の出身です。
彼女は、旧家らしく伝統的なたしなみを身につけるとともにミッションスクールに学ぶなど新しい文化や思想にも影響を受けて育ちました。
つぎつぎと短歌や詩を発表し文壇に注目された露子でしたが、26歳で家の後継の道を選択し、しばらく執筆活動を中断することとなります。
このころの作品「小板橋」は、当時の文学青年や詩人に広く愛読されました。
子育てが一段落したころから再び作品を発表しましたが、昭和34年享年77歳で生涯を閉じました。