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板持共同墓地『十三重層塔』

印刷用ページを表示する掲載日:2018年3月5日更新
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 市内東部に位置する東板持町二丁目の共同墓地に『十三重層塔』があります。この十三重層塔は、花崗岩でできたもので、高さが4メートル以上もあり、その重さで土台の石が半分以上地中に埋まっています。そのため、銘文は大部分が読めなくなっていますが、残っている部分から文保3年(1319年)と読み取れます。層塔には供養された人や製作した石工の名前が刻んである可能性があり、1319年といえば有名な楠木正成が活躍する直前ですから、楠木氏に関係する名前が出てくるかもしれません。
 こういう石塔は、多層塔・多重塔とも呼ばれ、個人や集団がそれぞれの祈願を塔に託して造られたものです。日本の石塔は、朝鮮半島から伝わったものが多く、十三重以外にも、三重、五重、七重と奇数に造られています。
 また、大正6年(1917年)に刊行された『郷土史の研究』には、「塔の心柱は或いは金ならんかと伝傳(いいつた)へたり」と、塔にまつわる黄金の言い伝えが記載され、戦後この地を訪れた米軍が、公民館建築と引き替えに、この塔をアメリカへ持ち帰ろうとした逸話なども残されているなど大変興味深く、謎めいた石塔といえるでしょう。
 なお、この石塔は、昭和10年に「重要美術品」として認定されています。
※重要美術品とは、昭和8年公布の「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」によって認定された美術品で、旧国宝の価値に準ずるものとされ、海外流出を防ぎ、適当な保存を図るために制定されたものです。その後、昭和25年の文化財保護法制定によって、この法律は廃止されますが、同法によって認定された物件については、今なお有効で、重要美術品の海外輸出には、文化庁長官の許可が必要です。
 重要美術品の扱いに関しては、文化財保護法制定後、重要文化財に組み入れる選考が続けられてきましたが、まだ指定されていない約7000件が今も重要美術品として存続しています。
(平成14年8月号)

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