昨年9月、甲田の宮林古墳(4世紀後半)を調査したところ、遺体の埋葬されていた部分から武器や工具、装飾品などが出土しました。その一つにやりがんながあります。
やりがんなとは、室町時代に、現在のような台がんなが現れるまで、材木の表面を仕上げる道具として使われていたものです。おがと呼ばれる縦挽(たてひき)のこぎりが普及するまでは、おのや、のみ、あるいはくさびで、木を裂き割って柱や板を作り、その表面をちょうなという道具で削って荒仕上げしていました。しかし、そのままだと表面が波打っているので高い部分を削り落として、より滑らかに仕上げるために使われたのが、やりがんなです。
宮林古墳からは2本のやりがんなが出土しました。どちらも形をとどめているのは鉄製の刃部分だけで、長さ28.5cmのものと、長さ12.6cmのものです。
刃の側面と裏面に木の痕跡が付着していることから、木の柄に溝を掘ってはめ込んで使っていたことがわかります。また、短い方にはひもの一部が残っており、柄に巻きつけ固定していたこともわかります。
このやりがんなは、宮林古墳に葬られた人、もしくはその身近な人の愛用品だったと想像されます。
いったい、どんな建物を建てるのに使われたのか、古代人の生活への興味がかきたてられます。
(昭和60年8月号)