ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

古代の硯

印刷用ページを表示する掲載日:2018年3月5日更新
<外部リンク>

 古代の文房具には文房四宝といって、墨・紙・筆・硯(すずり)があります。
 最も古く毛筆がはじまったのは、いうまでもなく中国です。殷(いん)の時代、つまり紀元前3000年にすでに墨で書かれた文字がありました。当時、日本はまだ縄文時代でした。そして、紀元前2000年ごろ、日本では弥生時代になったころに、中国ではすでに本格的な硯が使われていたことがわかっています。
 日本では、大陸から仏教文化が伝わった約1300年前の飛鳥時代から硯が使われていたことが、発掘調査によってわかっています。当時の硯は、円面硯(えんめんけん)といって、円い形のものでした。陶硯とよばれ、今の石でできたものとは違って、焼きものでできていました。このような硯が普及しはじめたのは、奈良時代のことです。奈良の都に宮殿が造られ、地方には今の役所のような地方行政をつかさどる官衙(かんが)が置かれました。
 昨年の8月から発掘調査を進めている中野遺跡(狭山河南線予定地)から、奈良時代の須恵器の円面硯が出土しました。他にも、同時代の瓦(かわら)や土器、それに塔の心礎(しんそ=塔中央の地下に埋めた心柱の礎石)などが出土しました。
 これらの遺物は、調査地周辺に、奈良時代の寺院跡があったことを裏付ける資料です。そして、国道旧170号線付近には、先に説明した官衙があったこともわかっています。こうしてみると、調査地周辺が奈良時代の律令体制下に置かれていたことがわかります。
 一点の硯から、当時の役所の官人たちが、紙や木簡などに文字を書いて事務処理をしたり、土器などに自由に落書きしていたことが、想像できます。今のワードプロセッサーの出現と同じく、毛筆は、文字を書くことにおいて画期的な出来事だったのでしょう。
(昭和64年1月号)

おすすめコンテンツ