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祭祀に使われた塩

印刷用ページを表示する掲載日:2018年3月5日更新
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 塩つくり(製塩)が、いつごろから、どのようにして行われていたか皆さんご存知でしょうか。
 土器による製塩は、東日本では縄文時代から、西日本では弥生時代中頃から備讃瀬戸(瀬戸内海)及び紀淡海峡(淡路島と和歌山の間)付近で行われ始めました。古墳時代にはその範囲は更に広まり、奈良時代には西日本のほとんどの海岸地域で作られるようになりました。
 製塩方法については、まだまだ不明な点が多いのですが、基本的には容器に入れた海水を煮沸し、残った結晶塩を取り出すという方法が取られていたと考えられています。奈良時代になると各地域ごとにそれぞれ独自の製塩土器(塩を作るときに使う専門の土器)が発達し、大量生産をめざすようになりました。製塩は、土器によるものだけでなく、鉄釜の使用や塩田によるものが導入されました。新しい技術で作られる塩は、散状塩といって白色の塩でした。それに比べて土器で作られる塩は、堅塩(きしお)といって色の黒い不純物を多く含んだ塩で、とても食用にできるものではありませんでした。そのため土器による製塩は、時代遅れのものとなり、非日常的な祭祀など特別なときに用いられるようになりました。
 昨年の11月から12月にかけて発掘調査を行った甲田南遺跡の出土遺物の中に、内側に布目の残る筒状のものや熱を受けて変色したり、白色の物質が付着している堅塩を作った奈良時代の製塩土器が含まれていました。このことから、甲田南遺跡でも、遠く離れた海岸地帯から製塩時に入った塩が運ばれ、祭祀が行われていたことがうかがわれます。
(平成元年9月号)

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