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半夏生

印刷用ページを表示する掲載日:2018年3月5日更新
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 そのまま読むと、ハンゲショウ。富田林の人々は“ハゲッショ”と呼びならわしています。はて、さて、一体何のことでしょう。暦の上でいうと、夏至から11日目がこの日。今年の夏至は6月22日ですので、“ハゲッショ”は7月2日です。ちょうどこのころに半夏=烏柄杓が生え始めるので「半夏生」といいます。農家では田植えが終わって、やれやれのとき。“ハゲッショ”の翌日にはもう「一番草」といって、田んぼの草取りが始まります。
 むかしむかし、おじいさんやおばあさんが子どもだったころや、そのまた前のひいじいさん、ひいばあさんが子どものころや、そのまた前のころも、“ハゲッショ”は休日でした。明治時代のある人の日記にも「明治8年7月2日、半夏生休ミ 同3日、半夏生休ミ」とあります。あるいはまた、「内ハ半夏生ノ取越ニテ餅搗スル 例ノ通リソレゾレクバル」。
 昔は何かことあれば餅をつきましたが、“ハゲッショ”には小麦餅です。何もかもが自家製の時代ですので、小麦も自分の畑で作ったもの。これを皮つきのまま挽いて餅米を半々くらいに混ぜて作ります。皮つきのままだからでしょうか。出来上がりの餅は赤っぽい。で、通称“アカネコモチ”。これに黄な粉をまぶして食べます。商売人や町家の人々は、近在の農家から、毎年、アカネコをいただきます。“ハゲッショ”と“アカネコモチ”は切っても切れない夏の行事でした。
 暦の上の“ハゲッショ”が忘れられていくのと同じように、皮つき小麦の“アカネコモチ”を作る農家も富田林市域から消えてゆきました。
(平成3年6月号)

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